Wednesday, October 31, 2012

ハレルヤ


 火星の北極にはドライアイスの海
 青く広がりし海も今は昔
 深く 凍り 沈む

 波の音 今は絶え
 魚たちは永遠の眠りから醒めず



バルセロナからロンドンへ向かう上空。朝9時、快晴。ビジネスクラスのシートには僕も含めて3人だけ。スチュアーデス2人に乗客3人、飛行機はすぐに巡航高度へ達した。 

ふと窓の外をみたら、不思議な風景が眼下に広がっている。飛び慣れているはずのスチュアーデスも一緒に、皆が子供のように窓の外を眺めてる。別にUFOが飛んでいたわけではない。

高度10000メートルの巡航高度。どんなに晴れていても、地表は少しは曇って見えるの。しかし、今この瞬間、眼下に広がる大地は、その端から端まで、全てが驚くほど鮮明なのだ。地球の表面をこれほど広い範囲で、ここまで鮮明に見たのは生まれて始めて。

手が届く!

そう思った瞬間、意識は巨大なシャボン玉の膜のように、地平線まで広がり、飛行機は巨大な硬質ガラスの中に、一瞬で凍ったような錯覚を起こした。

神様の視点にちょっとだけ近づいたような気がした。 

ふと見渡すと、平坦だった大地は「皺」として徐々に盛り上がり、気がつくと大きな山脈へと成長を始める。ピレネー山脈だ。その茶色の皺は、さらに大理石のように、白い頂上へとグラデーションする。

大理石の大地を眺めながら、僕は行ったことの無いはずの、火星の極地帯を連想してしまった。

100万年前まで海があり、今はドライアイスの氷が何百メートルもなる火星の北極。ドライアイスの下には、さらに分厚い氷の層があるという。

100万年。それは地質学的には、ほんの一瞬。濃密な大気と海の中、生物はかなりの所まで進化したはず。その厚い氷の中で、火星の魚たちは飛び跳ねたままの姿で、永遠の眠りについているに違いない。

 火星の北極にはドライアイスの海

 地平線に青く光る地球

僕らの子供たちがそれを見るのは、何千年、何万年先なのだろうか? 

神様の時間を少しだけ感じられた気がした。 

ハレルヤ 

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