Friday, October 26, 2012

幸せに生きる技術

今回の出張の目玉は、以前から興味はあれど機会が無かったポルトガル。 

一人当たりGDPで言ったら、おそらく東欧以下。 
「情報として得られる」ポルトガルは「黄昏の~」と言われるにふさわしい、さびれぶり(失礼)。隣のスペインは、ZARAに見られるように、ファッションや観光では、それなりに躍進してるし。イタリアはファッションだけでなく、実は流通でもITでも、EUの中で確たる地位を築きつつある。 

15世紀からの大航海時代、一時は「世界」をポルトガルとスペインで二分する条約をローマ教皇に認めさせた、かつての超大国も、世界経済的には、正直、今では、あってもなくても何の影響も無い、とは言いすぎ? 

しかし!やはり百聞は一見にしかず、百万グーグルも一度の実体験にかなわない。 

なんだこの幸せな国は! 

飯はどこで食べても安くて、美味い! 
昼の定食はワイン、前菜、メイン、デザート、カフェまで付いて、6ユーロ!夜の定食も10ユーロは越えない。 
カフェで飲むコーヒーは60c~80c、ウィーンは5ユーロ、スイスだって3,4ユーロはするよ?この前のザグレブだって1.5ユーロはしたのに。 
ミシュランの☆付きレストランは無いけど、どこに入っても外れないから、そんなの最初から意味無い。 

体感的には、食事、移動、宿泊、全てが他のEU諸国の半分以下、ベニスやウィーンといった観光都市に比較すれば三分の一以下。財布の中のユーロ現金が全然減らない国! 

そして、なによりも、会う人が全て優しく、旅人をもてなしてくれる。 

タクシーの運ちゃん、カフェのあんちゃん、定食屋のオヤジ、街角でサッカーしてる悪ガキまで、本当に皆が笑顔!観光地の入り口にいる乞食まで優しい顔。 

タクシーの運ちゃん、場所が判らなくなると、メーターを止めて、見つかるまで探し回る。こんな国、今でもあったんだ・・・ 
レストランで帰りのタクシーを頼めば、店のオヤジが、到着するまで3分おきに寒い雨の中を出て確認、こっちが恐縮することしきり・・・ 

皆、幸福感で満たされているから、他人に対しても無条件に優しくなれるのだなぁ!
 

ポルトガルに世界遺産は沢山あるけど、一番の遺産はこの国の人々に、共同体に、歴史的に形成され、言葉を話すように当然に身に付いた「幸せに生きる技術」なのでは?その、数値化、統計化不可能な「幸せ度」では、ポルトガルは世界でも最高なのでは? 

フランスやイタリアの田舎を旅して、人々の優しさに感動した事は度々あったけど、その優しさの根源の正体にようやく気がついた。 

大航海時代から産業革命、宗教改革など、数多くの社会的な激変を経る中、それでも人々が幸せに生きるための必要から生み出し、さらに共同体が受け継いできた知恵の集積。それがこのポルトガルには今も、いや今だからこそ、確たるものとして実在している。 

残念ながら「幸せに生きる技術」は、学校で教えられるものでもなく、ハウツー本で2時間で手に入れられるような知識でもない。 

資本という軸とは全く違う次元に「幸福」という軸を確立するには、その共同体に100年単位の時間が必要なのだろう。 

今の日本人の僕に出来ることは、街角のカフェに座って、美味しいコーヒーとバカリャウ(干し鱈)のコロッケを食べながら、この幸福感を身体に一分でも長く染み込ませる事だけだったよ。 

日本もあと100年くらいしたら、このくらい幸福な国になれるのだろうか?

Originally posted 2007年11月26日

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